マキエ術


磯からのフカセ釣りは、それもグレ釣りなどは特に、マキエのその撒き方が重要なキーポイントを握っています。
何故なら、グレはまずはマキエに集まってくる習性を持った魚だからです。
マキエのその重要性を考えずに、過去から現在の、そうして今後の釣りに対しても、漠然と対処してゆくのは、フカセ釣りの楽しさを味わえないばかりか、魚と出会えるチャンスをも自らが逃す事になり兼ねないのですから。

そこでまずはグレ釣りにおけるマキエの基本的な意味合いです。

グレという魚の基本的なその習性は、眼が良くて、俊敏で、臆病で、けれども警戒心がすこぶる強く、なかなか釣り上げようと思ってもそうそう簡単に釣り上げられる魚ではありません。
これはグレのエサを食べる状態を少し観察してみれば判る事なのですがー。
けれどもそんなグレもひとたびエサを食べ始め、沢山の仲間が集まり、沢山のエサがまわりに落ちてくれば、それまで就餌していた様子から一変し、元気に、大胆に動き始め出すのですから、本当に不思議な習性を持った魚です。

昔から徳島では、”グレ釣りは、マキエの切れ目が縁の切れ目。”だと言われてきましたが、けれどもその一方で、マキエの撒き方についても、”マキエは少量を間断なく撒け。”とも言われてきました。
これはマキエの持つ重要性をたった二言で見事に言い表した先人からの言葉なのですが、現在でもフカセ釣りのセオリーとして非常に重要な意味を含んでいる言葉なのです。

前者は、マキエがその日のグレ釣りのすべてを左右する、という意味にも受け取れますし、後者は、マキエを撒くその量は多過ぎず少な過ぎず、またその間隔は潮の状態やグレの就餌状態に合わせて継続してコンスタントに撒く事の必要性を説いているようにも思えるのです。

そこで、現在のグレ釣りにおけるマキエの基本的な方法の具体的な説明です。

マキエは魚を集め、就餌意欲を高め、最終的にはサシエをマキエと同じような状況で魚に食べて貰うための手段ですので、最終手段は、”マキエの基本はサシエとの同調を常に考えなければならない”、という点については、常に考えて読み進んでいただけたら、と思います。
さらには、マキエには釣るためのマキエと集めるためのマキエ、さらにはエサ盗り対策のためのマキエ、という三つの役割がある、という事をも合わせて覚えておいていただけたら、と思います。

1)マキエを多く必要とされる条件

*エサ盗りが多く集まり、魚全体の活性が高い状態の場合

こんな状況下では、マキエの大半はエサ盗りに与えるつもりでケチケチせずに撒く事です。
そのためマキエの量も沢山必要になりますし、と同時に撒く回数も忙しくなります。
集まったエサ盗りの種類にもよりますが、オセンやオヤビッチャ、フグ、ベラ、キタマクラなどの類は、ダイワの比重の違いを利用した集魚材”グレジャック口太””クロパン”の二本立てで対処。こういった集魚材を使用すればマキエのまとまり性能やバラケ具合いなどがこちらの撒き易い状態になるからです。

余談ですが、オキアミはできるだけ潰さないほうがベスト、また針は少し大きいものを使用すれば結構エサ盗りが食い残してくれ、グレにサシエは届くものです。(寒グレ釣りとは逆の発想も大切なのです。)

狙うポイントは一番にはエサ盗りの中、二番目は少し沖合い、三番目は少しサラシがあればという条件付きで磯際、の三ヵ所。

エサ盗りの中を釣ろうとする場合は、まずはマキエを釣ろうとするポイントに数杯撒きます。
その後、仕掛けを入れてすぐさままとまった追いマキエをウキの頭に撒く方法と、少し多い目のマキエを撒いてからすぐさま仕掛けを入れる方法の二点。
そのどちらの方法にせよ、仕掛けを入れる前後には何杯かのマキエはコンスタントにエサ盗りに対して与え続ける、という事が必要不可欠な作業です。

少し沖合いを釣ろうとする場合は、マキエをエサ盗り用に少し多く撒いて手前周辺の何ヵ所かに引き寄せ集めてしまいます。
エサ盗りの状態は眼で観察することができるので、じっくりと時間をかけて集めます。
この場合、エサ盗りが食い残しをするくらいにまで量を多く撒いてやるのがコツ。
狙いは少し沖合いの潮下ですが、釣ろうとするポイントには二とうりのマキエ術が必要です。

一つ目は、雨が降るようにパラパラと撒きます。
そうしてその周辺に仕掛けを入れます。しばらくサシエが残る状態ならこの方法の繰り返しで大丈夫でしょう。
全くサシエが残らない場合は、まとまった量のマキエを狙ったポイントの少し潮上に入れます。
そうして少し潮下を狙います。但し、この方法を行なった後は必ず手前にエサ盗りの呼び戻し用のマキエを何杯か入れてまたエサ盗りを手前へ集めてやる方法を行なう必要がありますので、マキエの打ち返し回数とその量はかなりの覚悟が必要です。

磯際を狙う場合、マキエは磯際周辺に適当にコンスタントに撒いてやれば問題はありませんが、問題は仕掛けを入れる場所と釣るためのマキエを撒くタイミングです。

集めるためとエサ盗り対策用については適当に磯際周辺へ撒き、仕掛けを入れるのは海面が上がった後下がり始めるその瞬間にサシエから入れるのが基本です。
その前後に瞬時に釣るためのマキエをサシエ目掛けて撒いてやります。
勝負はサシエが馴染み磯際から少し離れた瞬間です。
慣れないと少しタイミングの取り辛い釣りですが、条件が合えば大きいグレや数の釣れる釣り方なので機会があれば試してみる事をお勧めしましょう。

2)マキエをそれほど必要しない条件

*魚が集まらず魚全体の活性が低い条件

こんな状況の場合でもマキエを撒かなければグレと出会える確率は非常に低くなってしまいます。
問題はマキエの撒き方とその量なのですが、活性が低ければ必要以上のマキエを撒けば魚のタナを深くしてしまうばかりか沖合いへ追いやってしまう事にもなりかねませんので注意が必要です。

こういった状況下でのマキエは、一回の撒く量は少量に、そうして撒く回数は臨機応変、が基本となります。
オキアミは少し潰し加減に小さくし、集魚材は拡散性能の良い”グレジャック寒グレスペシャル”などがお勧めです。

撒き方はピンポイントにまとめて撒くのではなく、ひしゃくで水打ちをするように、狙ったポイントの辺り一面に広げるように撒きます。仕掛けはマキエを撒いた場所より少し潮下へ入れます。
これが活性の低い状況下での基本的なマキエの撒き方です。

けれども魚釣りには時合いというものがあります。
活性の低い状況下でも、魚の就餌欲が高まる時間帯が一時的にせよあるものです。
その時合いは潮の動き加減であったり、ある時には時間帯であったり、またある時には潮の干満に左右されたりします。
それはサシエのなくなり具合いから判断できる場合もあります。
時合いがくれば、それまでと同じようなマキエを撒くリズムを少し変えて、量を増やしたり、回数を多くする工夫も必要です。
要は、マキエを撒く量やその回数、さらには撒くポイントについては魚の就餌状態に合わせて撒いてやる、という事が基本となってくるのです。

最後に、グレのフカセ釣りにおけるマキエは、植物の水やりと同様に、通常であればその基本を覚えるまでに三年ほどは必要とされる非常に重要な作業です。
水をやり過ぎても根腐れで枯れ、水をやらなければまたまた枯れてしまうのと同様な作用を持っているのです。
考え無しの撒き過ぎは確実に魚との出逢いを遠ざけます。
けれども全く撒かなければとても魚と出逢う事はできません。
マキエをその時々の魚の就餌状況に合わせて、それこそ臨機応変に撒いてやる、そのためには上記したようなマキエの基本的な撒き方を、まずは現場での実践から少しずつでも覚え体験していただければ幸いです。


(注)
<この原稿は、10月下旬に発刊される、ある磯釣り専門誌に掲載される予定の内容を、一足お先に公開しました。>