男女群島の尾長グレ釣り (2001.12/6-7.)



<12/7早朝の中ノ瀬戸周辺>

十一月の中旬過ぎに一本の予期せぬ電話が掛かってきました。

「今年最後の放映予定のThe Fishingのためのロケを男女群島で行いたい、と考えているのですがご都合はいかがでしょうか?」 −と。

ご都合も何も、何をさておいてでも出かけて行こう、と瞬時に考えた浅はか(?)な私でした。

それまでは結構チヌ釣りのロケが多かったために、願ったり叶ったりの心境です。チヌはその業界ではなかなかアテにならないところから、別名「苦労ダイ」(クロダイのゴロ合わせです)と呼ばれているのですよ。

そんな苦労するクロダイよりも、今回は豪快で、ましてや尾長グレの宝庫男女群島です。

「尾長グレはわしに釣られるために泳いでいるんじゃ。」 なんて傲慢な気持ちは少ししかないものの、もう釣果は約束されたようなもの。過去の25回の釣行で自信満々の私なのでした。

そう言えば10年ほど前にも男女群島でThe Fishingのロケを行った事がありました。
その時は、鵜沢、山元、両氏と僭越ながら薄墨、という3人のメンバーでしたが、当時は入れ食いでもう大変。(まあ釣れたお話はやめておきましょう。)


ーで、いよいよ当日には福岡へ

空港へ定刻に着陸するはずの私の乗った飛行機は、何と強風のために30分近くも山口上空で待機飛行を繰り返しています。

これは大変、と一抹の不安を感じながらも、明日の釣りの期待にはまだまだ心弾んでいる私でした。

けれども今回の相棒は、別名「時化大魔王」と自他共に認められている、本当に恐ろしい異名を持っている素晴らしい友人、ターボー(丹羽正さん)なのです。

まあジンクスは皆が責任逃れで押し付けた事からスタートするものです。たいした問題じゃあありませんですねえ。


<今回のメンバーのスナップを先にお披露目>

定どうりに平戸口を午後五時に出港。男女群島までは4時間足らずの航海でした。

結構のウネリです。凄い風も吹いています。−が、釣りは明日の早朝からなので何も心配はありません、とは心底思いませんでしたが、まあ明日は明日の風まかせ。

午前0時30分、風力8、波3。午前2時30分、風力8、波3。女島の気象台から一時間ごとに気象状況が伝えられてきます。

いよいよ磯上がりの準備をする前の状況は、午前5時30分、風力9、波4。

ガチョーン。風力9とは?風速はいったい何mなんでしょう?(参考までに最後に風力と風速、時速の関係の表を掲載しました。)
大嵐、大嵐。もう海峡筋での尾長グレとは出会えません。
ーがまあ何とかなるでしょう・・・・・か?。


今回の釣行は6日から7日の午前10時まで。

7日は午前7時過ぎの夜明けからの3時間足らず。それも潮変わりが午前8時前後なのですから、まあ期待できる時間はほんの僅かです。いわば6日の一日が勝負日だと考えていた矢先のこの悪天候。

「ーったくどうしてくれるんじゃい。」 せっかくの男女群島への釣行というのにー。

けれども、されども、そこは男女群島です。風裏の磯は無数にあるし、何も海峡筋の尾長でなくともウヨウヨ、ウヨウヨといたるところに泳いでいるはず、でした。

最初の磯上がりは女島の” 二重鼻”。またまた10年前のロケ地でのスタートとなりました。

マキエをすれば、もういるわいるわ、イズスミの大群がー。まだ水温が高いせいなのでしょうか?それとも潮の状況が芳しくないのでしょうか?

ーがその内に突然のヒットです。しなやかでスムーズで、けれども強靭なパワーを秘めたマスターDRY2号がイズスミの海からいきなりギーュンギーュンと快い曲がりを見せながら未だ見ぬ獲物と格闘を始めました。

リールもこの釣行のために用意してきたトーナメント4000LBD。結構強く締めてあったドラグも魚の勢いに合わせて心地よい音を立てながら懸命に魚をなだめようとしています。

私は私で竿尻を腰に固定しながらの奮闘で、まあまあ何と走る、走る、それもそのはず、大きなヤイトガツオだったのです。

あーあ、疲れた!でも竿の曲がりとリールのドラグの調子はもうこれで体にインプットされたのですから、感謝するべき、なんでしょうねえ。。。


辺り一面がイズスミだらけのため全く釣りにならない状態。−で、9時過ぎの磯変わりは男島の“ノコギリ”へ。

イズスミが湧いていて釣りにならない、なんて話は噂では聞いていたものの、もうこれは超異常繁殖です。まるでイズスミの養殖場。

ギブアップ、ギブアップ。完全にギブアップです。でもロケではギブアップできません。残された時間はネバーギブアップ、なのです。

ところがさらに凄いのがノコギリでした。稲葉の白うさぎじゃあないけれど、イズスミの上を歩けるほどなんですから。それに混じってオジサン(ウミヒゴイ)が沖合いまで群れになってエサを拾い漁っている光景。イズスミの黒っぽいのとオジサンの赤、綺麗といえば綺麗のでしょうが、もうこれは異様な光景です。オジサンなんて通常は磯際近くに居着いている魚なのに・・・・????

それじゃあとばかりに一匁の鉛で仕掛けを超遠投しても、まるでマキエの効いていない遥か沖合いでもイズスミがヒット、ヒット、ヒット。

この時ばかりはもううんざりです。丹羽ちゃんは何を血迷ったのか、マキエをして、タモでイズスミを一網打尽にしようと、ったく無駄な事をしでかす始末。よっぽど腹に据えかねたのでしょうか・・・・?

ーで、またまたギブアップ。午後2時近くになっても二人ともグレなんかはまったくのボーズなのです。

我々釣り人ばかりか、ディレクターさんなんぞはもっともっと辛い想いをしているはずです。
さらにはこうやって必死になって待ち構えてくれている音声さんや少し離れた場所にいるカメラマンさん達もまた・・・・・。


オンエアーの予定は12月22日。もう後がありません。

行の他の一般の釣り人は15人あまり。何処も同じような状況だそうで、すべての釣り人がやはりサッパリとの事。

これには本当に困ってしまいました。今回のロケがボツになれば、一大事、です。

「誰じゃあー、こんな時期に男女群島への釣行を企画した人間はー。そうして男女群島へゆけば大きい尾長グレが釣れて当然、などと安易に考えている奴はー。」

なんて訳の判らない怒りが込み上げてくるのを抑えながらも、それでも概して人間は途中経過なんぞには興味がなくて、結局は最終の結果で判断されるのですから。

まあ辛い事には慣れています。けれどもそれは自分だけが辛い想いをする場合だけであって、他人もろとも巻き込むような状況では・・・・・、けれども、うーん!・・・・・やはり頑張らなくてはならないんでしょうネ。

作戦の練り直しで、今度はタンポ(潮の動きが悪いワンド)への磯変わりです。

船長は私の予期せぬ場所への指示に、「昼寝をするのかゆっくりと食事をするのか?」、と聞き返してきたので、「そうだ!」と答えるより他ありませんでした。

心配して懸命になってお世話をしてくれている心優しい船長へのある種の裏切り行為なのかもしれませんが、それほど私は切羽詰まっていたのでしょう。

午後3時に近い時間になり、もう大きい尾長グレの望みはありません。尾長グレどころか、グレの一枚も釣れていないのですから。

取り敢えずは状況のガラリと違った場所で、この日最後の勝負です。


日没までには二時間半あまり。もうすぐ一日が終わろうとしています。

海はずいぶんと凪いできました。マキエにイズスミはあまり集まりません。潮の動きが悪い場所はどうやらイズスミの動きも悪いようです。

釣り始めた途端、石鯛がヒット。次はマダイ、イシガキダイ、キンダイ(石鯛とイシガキダイの交配種だそうです)、フエフキダイ、・・・。思わず海を疑いたくなってしまいます。何でこう外道ばかりなのか、それもウキ下を浅くしても沖合いを狙っても、なのですから変な海、としか言いようがありません。

ーが、右端ではようやく丹羽ちゃんが40cm近いグレを釣り上げました。少し遅れて私にもー。

その後、ポツポツとですが、やはりグレは顔を見せてくれました。
尾長グレの35cm程度のも釣れたのですが、満足を味わうにはとても程遠い釣りだったのですが・・・・。

けれども与えられた状況下では、Do The Best、なのです。誰だって男女群島まで来て近場で釣れるような口太グレを釣りたくはありません。でも今日は取り敢えずはグレと対面できたのですから、喜んで、そうして感謝すべき、なんでしょうねえ?


夜の船の中での食事。釣り人の我々だけではなしに、ロケのスタッフ一同にも苦悩の表情が浮かんでいます。

なかなか自然に立ち向かうには難しい問題が山積している、という事実や現実を幾度となく繰り返し味合わされても、また釣り人やその関係者は懲りずに海へと、そうして釣り場へと立ち向かってゆかねばなりません。彼らは仕事のためかもしれませんし、我々釣り人は個人の釣りへの情熱や尊厳を保つためだけに出かけているのかもしれませんが・・・。

眠られぬ夜になりました。仕方ない事は仕方ないのですが、でも悔しさはお互いがぬぐえないのです。
楽しさを味わうための苦しさや悔しさ、それが過去に幾度となく繰り返され、いつか実り多い収穫となるその瞬間が、もしかして釣りの持つ一番の魔力なんでしょうか?ましてやその瞬間が来る保証などこれっぽちもないのに・・・・。


7日、風力2、波1。前日とは打って変わった絶好の日和です。

まだ我々に多少の“ツキ”は残されていたのです。

中ノ島の水道に面した“サトウ瀬”に磯上がり。

釣り始めた午前7時過ぎ、まずは丹羽ちゃんが45cmの口太グレを釣り上げました。取り敢えずホッとしたのは私もなのです。
持つべきものは友人です。丹羽ちゃんのお蔭で随分と気分的にも楽になったのですから。

ーで、私には小さいヒラマサ。昨日から外道釣りの名人(?)です。なんて悠長な事は言ってられないのですが・・・・。

午前8時30分前にすぐ前の“荒磯カブリ”へ磯変わり。潮の流れる角度を見ての転身で最後の勝負に臨みます。

潮切れは良く、本流の残り潮は素直に沖合いへ流れてゆきます。下げ潮から上げ潮に変わるはずの時間帯なのですが、海峡筋は一時間余り遅れる、との事。

後になって考えてみれば、これもラッキーでした。残された時間はもう僅かに一時間あまり。ポツポツとグレが釣れ始めます。

ーで納竿前にそんなに大きくはないものの、下のような0cmほどの尾長グレがようやく食ってくれたのです。

不満と満足、失望と喜び、不安と安堵、いやはや何とも複雑な釣行になってしまいましたが、スタッフ一同の笑顔を引き出したのは、どうやら一匹の尾長グレだったようです。

一番の特効薬となったグレの持つ存在感、釣り人としても羨ましい感じがするのですから何とも奇妙な気分です

取り敢えずは「今回はこれで勘弁してやろう!」、そんな負け惜しみの捨てゼリブの一つも叫びたくなるような釣行となりましたが、やはりグレ釣りは楽しい、という事をまたまた再認識させられた次第です。


風力とは?

風力
風速(m/s)
時速(km/h)
周囲の状態
1 煙がなびき、風があることがやっとわかる。
11 顔に風を感じる。木の葉が動く。
18 木の葉がたえず動く。軽い旗がはためく。
29 砂ぼこりが立ち、紙が舞い上がる。
11 40 小さな木がゆれ、池の水面に波頭が立つ。
14 50 大枝が動く。傘がさしにくい。
17 62 木全体がゆれ、風に向かって歩きにくい。
21 75 小枝が折れる。風に向かって歩けない。
25 88 建物に少し被害が出始める。
10 28 100 木が根こそぎ引き抜かれる。