高知県久礼磯、春のチヌ便り’99/3/11



★★★'99年、春一番。高知県須崎市の岡田さん53.5cmの大チヌを釣り上げる。★★★



桜三月、春到来。長かった冬も終わり、いつの間にやら、もう季節は春になってしまいました。
春といえば、磯では桜チヌの到来を迎えます。
まだ三月初旬の十日(水)の午後六時、我が家へやってきた「週刊釣りサンデー」の廣田さん高知県の須崎市に向かって出発です。今年一番の春の大チヌ釣行に、何故か心は弾みます。

目的地の須崎市までは三時間。馴染みの須崎市の郊外に位置する、”田舎レストランやまさき”で、私の友人であり、今回の釣行のお世話と同行をしていただく、武内さん岡田さんとの明日からの釣りの打ち合わせを兼ねた夕食会。
渡辺店長のいつもながらに用意をしてくれる、どびきり美味しい御馳走と、気の合った仲間との楽しい時間は、私の人生最高の至福に満ちた時間です。ーで、春の宵はいつしか、”あっ!”、という間に過ぎてしまいました。


<この日の取材メンバー。左が武内君、右が岡田君>

三月十一日、午前六時三十分、須崎市のお隣に位置する久礼の港から、我々四人がまず最初に目指したのは、穏やかな久礼湾内に浮かぶ磯、”ライオン島”。
この日は沖合いに居座っている前線の影響でうねりが高く、穏やかな湾内の磯も、時々は白いサラシに取り囲まれるような状況でした。チヌ狙いの絶好の条件になればいいのですが、、、。

期待を胸の内に秘めて、まずは仕掛けを第一投。ウキ下の設定や、ポイントの把握、潮の状態、マキエの流れ具合、などなどを試行錯誤で探り始めることから、いつものように釣りは始まりました。
釣り始めて約一時間。”???”、まだ状況が掴めません。二時間経過。それでもまだ、”???”。サシエが全く無くならないのです。勿論かじられた様子も全くありません。もう仕掛けやタナの変更は数え切れないくらいです。三時間ほど経ったころ反対側へとポイント変更も試みました。ーが、こりゃダメだ。”の一言です。春磯のチヌ釣りは、こんな状況によく出くわします。それは、春磯の持つ特有の現象なのですが、、、。

見切りを付けて、正午過ぎには湾の右出口に位置する”ドウゼンバエ”へ磯変わり
相変わらずウネリは高く、磯周辺は真っ白のサラシで取り囲まれてしまいます。これは条件的には非常に厳しい状況なのです。春のチヌは産卵場所を探して、穏やかな場所へ寄ってくるのですから。
けれども、今回は雑誌の取材釣行です。条件がどうであれ、とにかく限られた条件と限られた時間の間にチヌを釣らなければ、全く何も始まらないのです。この日は本当に困りましたが、これは仕方のないことなのです。(釣りには、こんな釣りもあるのです。)−で、とにかく頑張らなければなりません。白いサラシの切れ目や、ウネリの振幅を計算しながらの我慢の釣りを余儀なくされます。
午後一時過ぎ、ついに待ち望み、我慢しながら釣っていた私に、待望の初ヒットです。

これはチヌだ。!!”、そう確信した私は、もう必死でした。
周りは浅いシモリだらけ、サラシで潮はぐちゃぐちゃにもまれ、魚も必死で逃げようとしています。チヌ特有の引きも何も、とても味わえたものではありません。水面近くに寄ってきても、まったく魚の確認ができません。”逃がしてなるものか。”の一念で、慎重に、丁寧に、糸を出し入れしながらのやり取りがしばらく続き、何と上がってきたのは、釣った私ばかりか、見守っていた皆さんの期待を大きく裏切って、それは、40cmのグレ、でした。
矛盾する言い方かもしれませんが、ほんの少し嬉しかった、と思うのですが、けれどもこれは私にとっても、そうして皆さんにとっても、大変悲しい出来事でした。

−で、気を取り直して残された時間を頑張ります。午後二時三十分、今度は船着きで釣っていた岡田さんの竿が、大きく絞り込まれました。固唾を飲んで見守る中、とうとう水面に姿を現したのは、皆が待ち望んでいた待望の大チヌそのものだったのです。

土佐の黒潮、目の前には大きく広がったクジラも泳ぐほどの大海、太平洋その沖の磯で、大チヌは我々の目の前にその勇壮な姿を現しました。

私にとっての春一番のチヌの便りは、早春の黒潮の海から届けられたのです。



百聞は一見にしかず、ーということで、春一番のチヌの便りを、シロウトカメラマンの私が撮影した写真で皆さんにお届けしましょう。
普段は滅多にみられない(?)、取材現場舞台裏の実況中継ですがいかがでしょう。

カメラマンは、業界ではその名も知られた「週刊釣りサンデー」の写真部長、廣田利之さん。




現場での取材風景の流れを、一連の情景写真で紹介するとこんな風になります。とにかく魚釣りにおいての主役は、まずはなのです。

”釣りは楽しく!!”、−がモットーの私も、取材の釣行で釣れないと大変です。釣り人の大変さよりももっと大変なのは、当然ですが取材者です。さらに取材者よりももっともっと大変なのは、釣られた魚なのかもしれませんが−。(?)

とにかく、お目当てのチヌは残念ながら(?)岡田君の一匹のみに終わってしまいました。−が、”少なく釣って、多くを楽しむ。”、−と、いうことに今回はしていただきましょう?

彼の一匹と彼の笑顔が、この日の釣りの感動のすべてを味合わせてくれたのですから。


主役交代

岡田君は私より遥かに若い、三十二歳。元気はつらつ、陽気で、素直で、純朴な青年です。(運にも見放され、釣れなかった武内君も勿論なのですが。)
今回は、私や武内君の分まで頑張ってくれました。グレは実寸で、40cmジャスト。チヌは53.5cmです。大チヌのこの迫力、いかがでしょう


[チヌが一匹しか釣れなかった考察]

釣りは、釣れてこそ釣りだ、という考えがあります。それとは別に、釣果云々で釣りは語れない、という考えも。
けれども自然相手の釣りという遊びは、釣り人がその自然の力の偉大さを一番最初に認めることから、本当に心から楽しめるようになる、と私は思っています。釣れる、釣れない、釣果云々はともかくも、自然相手の遊びでは、不思議と自然に対して、何故?、という気持ちを、私はいつも抱いてしまいます。
釣れる時には釣れる理由が存在し、釣れない時には釣れない理由が、当然ながら存在しているからなのです。釣れない理由を考えるのも、どうしたら今後魚と出会える確率が高くなるのかを考える上では、非常に重要な事なのです。

そこで今回は、釣れない状況の考察です。
今回は残念ながら(?)、お目当ての大チヌは一匹だけでした。勿論一匹でも出会えた事に感謝していますが・・・。けれども問題は、何故一匹だけだったのか、という事。
まず、今までの経験から判断すれば、春の潮の狙いは、兎にも角にも、込み潮(満ち潮)です出会える確率が高くなるのは、圧倒的に込み潮なのです。(その具体的な原因は、はっきりとは解りませんが。)
次に、潮の動きです。潮の流れが普段の状況よりも、あまりにも変わった場合は、概して春先のチヌと出会える率は低くなるものです。

今回の釣行で、この二点にだけは残念ながら恵まれていませんでした。(一応、その事は十分過ぎるほどに理解していたので、自分なりに自然条件を味方にしようと努力はしたつもりなのですが、努力はいつもの如く、まだまだ足らなかったのでしょう。)

干潮は正午過ぎ、うねりは終日に渡り、磯際にそれまでにない潮の蠢きを作ってしまいました。私はこの二点が、一番大きな原因である、と考えています。
勿論釣りの組み立て方、釣り方、狙うポイントの選定、魚がその日何処に居着き時間の経過で何処に移動するかを判断する力、などなどと、釣り人側の能力の無さなどをも考えれば、その原因はそれこそキリがないくらいです。それは釣り人側の判断で、今後努力すれば、かなりの部分は改善されうる要因です。
けれども与えられた条件の中で、釣り人側が全知全霊を尽くし、そうして目指す魚と出会えなかった。そうして、何故出会えなかったのかを考える時、釣り人側の要因はともかくも、あらためて自然の持つ力の偉大さに驚くより他ないのです。

釣り場に向かって、敗北はしても、絶対に敗退をしてはいけない、これが今日の私の最終結論です。

参考までに、岡田君がチヌと出会った時間は、干潮から二時間半ほど過ぎた、午後二時半ポイントは、一番ウネリの影響の少ない船着きでした。船頭さん曰く、”今までに船着きで釣った人間は一人もおらん。マグレと違うか。”、などなどと、誉めているのやら、感心しているのやら、全く訳が判りません。この磯に限っては、通常は全く釣れないポイント、そこで彼は見事にチヌと出会ったのです。


「後記」

グレ釣りではチヌをチヌ釣りではグレを、私の釣り人生、最近は何故か狂いっぱなしです。−が、私はともかくも、この日の取材は、後日、「週刊釣りサンデー」に掲載されます。
3月24日発売
「週刊釣りサンデー」、4.4号に掲載されました。

ご存知の方も多いと思いますが廣田カメラマンの撮影した写真は、その一枚一枚が見ている釣り人(読者)に動きを感じさせ、そうして立体的なシーンを想い浮かばせます
一枚の写真から何かを伝えることのできるカメラマン、私もほんの少しはプロのカメラマンとお付き合いがありますが、彼ほどにセンスと迫力のある写真を撮るカメラマンには、私も思わずファンになってしまいます。。

そんな彼の撮った写真が掲載されている「週刊釣りサンデー」をどうぞよろしく!!、そうして、ぜひ一度ごらんになっていただければ幸いです。


<終わり>